危険物取扱者(乙4)の計算・公式
乙4の計算は、法令の指定数量の倍数と、物理・化学の比重・熱量・気体の法則・反応式の量的関係が中心です。民間の出題傾向記事では、物理・化学10問のうち計算は2〜3問とされています。試験会場では電卓を使えないので、例題も手で計算できる数にしました。
指定数量の倍数(複数の品名を合算する)法令
倍数 = Aの数量 ÷ Aの指定数量 + Bの数量 ÷ Bの指定数量 + …
品名ごとに数量を指定数量で割り、その和を求めます。和が1以上なら指定数量以上とみなされ、製造所等でなければ貯蔵・取扱いができません(消防法第10条第2項)。第1〜第3石油類は、水溶性だと指定数量が非水溶性の2倍になります。
例題
同じ屋内貯蔵所に、ガソリン600L、エタノール800L、軽油1,500L、重油3,000Lを貯蔵する。指定数量の倍数はいくつか。
- 指定数量を確かめる:ガソリン200L、エタノール(アルコール類)400L、軽油1,000L、重油(第3石油類・非水溶性)2,000L
- ガソリン 600 ÷ 200 = 3.0
- エタノール 800 ÷ 400 = 2.0
- 軽油 1,500 ÷ 1,000 = 1.5
- 重油 3,000 ÷ 2,000 = 1.5
- 合計 3.0 + 2.0 + 1.5 + 1.5 = 8.0
答え:8.0倍(指定数量以上)
よくある間違い:重油を第2石油類と取り違えて1,000Lで割ると、重油の分が3.0になり、合計が1.5ずれて9.5倍になります。
液比重から質量・体積を求める物理・化学
質量(kg) = 体積(L) × 液比重 / 体積(L) = 質量(kg) ÷ 液比重
液比重は、同じ体積の水と比べた重さの比です。水1Lをおよそ1kgとみなせるので、体積に比重を掛けると質量になります。比重が1より小さい液体は水に浮きます。
例題
液比重0.72のガソリンが25Lある。質量は何kgか。
- 比重0.72の液体1Lの質量は約0.72kg
- 25 × 0.72 = 18
- 確かめ:18 ÷ 0.72 = 25(L)
答え:18kg
よくある間違い:掛けるところで割ると 25 ÷ 0.72 ≒ 34.7kg となり、水より軽い液体なのに同じ体積の水(25kg)より重くなってしまいます。比重が1未満なら、質量の数字は体積の数字より小さくなります。
蒸気比重(空気より重いか軽いか)物理・化学
蒸気比重 = 蒸気の分子量 ÷ 29(空気の平均分子量)
蒸気比重が1より大きい蒸気は空気より重く、床やくぼみにたまります。第4類の代表物質の蒸気はどれも1より大きく、低い所の換気が必要になる理由になっています。
例題
エタノール(C₂H₅OH)の蒸気比重を求める。原子量は C=12、H=1、O=16、空気の平均分子量は29とする。
- 分子量 = 12×2 + 1×6 + 16×1 = 46
- 蒸気比重 = 46 ÷ 29 ≒ 1.59
- 1より大きいので、蒸気は空気より重い
答え:約1.6
よくある間違い:水素を C₂H₅ の5個だけ数えて OH の1個を落とすと、分子量が45になります。構造を書き出して原子を数えると落としにくくなります。
熱量=質量×比熱×温度差物理・化学
熱量 Q(J) = 質量 m(g) × 比熱 c(J/(g·K)) × 温度差 Δt(K)
比熱は、1gの物質の温度を1K上げるのに必要な熱量です。比熱が大きい物質ほど温まりにくく冷めにくくなります。温度差は℃で数えてもKで数えても同じ数です。
例題
比熱2.4 J/(g·K)の液体200gを15℃から40℃まで温める。必要な熱量は何kJか。
- 温度差 Δt = 40 − 15 = 25K
- Q = 200 × 2.4 × 25 = 12,000 J
- 1kJ = 1,000J なので 12,000J = 12kJ
答え:12kJ
よくある間違い:温度差ではなく最後の温度40をそのまま掛けると、19,200J と大きく出ます。
液体の体膨張物理・化学
増える体積 ΔV = 元の体積 V₀ × 体膨張率 β × 温度差 Δt
液体は温度が上がると体積が増えます。容器いっぱいに詰めると、膨張した分があふれたり容器が壊れたりします。運搬容器に入れる液体の危険物を内容積の98%以下にし、55℃で漏れない空間を残す決まり(規則第43条の3)は、この膨張に備えたものです。
例題
体膨張率1.35×10⁻³ /Kの液体20Lを、10℃から30℃に温める。体積はいくつになるか。
- 温度差 = 30 − 10 = 20K
- ΔV = 20 × 0.00135 × 20 = 0.54 L
- 膨張後の体積 = 20 + 0.54 = 20.54 L
答え:20.54L(0.54L増える)
よくある間違い:問題が「増える量」を聞いているのか「膨張後の体積」を聞いているのかで答えが変わります。0.54Lと20.54Lのどちらを答えるか、問題文を読み直してから選びます。
ボイル・シャルルの法則物理・化学
P₁V₁ ÷ T₁ = P₂V₂ ÷ T₂(T は絶対温度。K = ℃ + 273)
一定量の気体の体積は、圧力に反比例し、絶対温度に比例します。温度は必ず絶対温度に直してから式に入れます。
例題
27℃・200kPaで3.0Lの気体を、87℃で1.5Lにした。圧力は何kPaになるか。
- T₁ = 27 + 273 = 300K、T₂ = 87 + 273 = 360K
- 式を変形する:P₂ = P₁ × V₁ × T₂ ÷ (T₁ × V₂)
- P₂ = 200 × 3.0 × 360 ÷ (300 × 1.5) = 216,000 ÷ 450 = 480
答え:480kPa
よくある間違い:℃のまま 200 × 3.0 × 87 ÷ (27 × 1.5) と計算すると約1,289kPaになり、大きくずれます。
化学反応式から必要な酸素の量を求める物理・化学
O₂の物質量(mol) = 燃える物質の物質量(mol) × 反応式の係数の比(O₂の係数 ÷ 燃える物質の係数)
物質量(mol)は質量÷分子量で求めます。反応式の係数の比で酸素のmolを出し、体積が要るときは0℃・1気圧で1molあたり22.4Lを掛けます。
例題
メタノール(CH₃OH)64gを完全燃焼させるのに必要な酸素は何molか。0℃・1気圧で何Lか。原子量は C=12、H=1、O=16 とする。
- 反応式:2CH₃OH + 3O₂ → 2CO₂ + 4H₂O
- メタノールの分子量 = 12 + 1×4 + 16 = 32、物質量 = 64 ÷ 32 = 2mol
- 係数の比 CH₃OH:O₂ = 2:3 なので、O₂ = 2 × 3 ÷ 2 = 3mol
- 体積 = 3 × 22.4 = 67.2L(質量なら 3 × 32 = 96g)
答え:3mol(67.2L、96g)
よくある間違い:係数をそろえる前の CH₃OH + O₂ のまま1:1で計算すると、2molと出てしまいます。先に両辺の C・H・O の数をそろえます。
蒸気濃度と燃焼範囲物理・化学
蒸気濃度(vol%) = 蒸気の体積 ÷ (蒸気の体積 + 空気の体積) × 100
蒸気濃度が燃焼範囲(下限〜上限)の中にあるときだけ、火をつけると燃えます。薄すぎても濃すぎても燃えません。分母は空気だけでなく、蒸気と空気を合わせた体積です。
例題
ガソリンの蒸気4Lと空気46Lが混ざっている。燃焼範囲を1.4〜7.6vol%とすると、点火源があれば燃えるか。
- 混合気の体積 = 4 + 46 = 50L
- 蒸気濃度 = 4 ÷ 50 × 100 = 8.0 vol%
- 上限の7.6vol%を超えているので、濃すぎて燃焼範囲の外
- 比べると、蒸気3Lと空気97Lなら 3 ÷ 100 × 100 = 3.0vol% で範囲の中
答え:燃えない(8.0vol%で上限を超える)
よくある間違い:分母を空気の46Lだけにすると 4 ÷ 46 × 100 ≒ 8.7vol% になります。この例では結論が同じでも、境目に近い数の問題では答えが入れ替わります。
質量パーセント濃度物理・化学
質量パーセント濃度(%) = 溶質の質量 ÷ (溶質の質量 + 溶媒の質量) × 100
分母は溶媒(水など)だけでなく、溶質を含めた溶液全体の質量です。
例題
水120gにエタノール30gを混ぜた。エタノールの質量パーセント濃度は何%か。
- 溶液の質量 = 30 + 120 = 150g
- 濃度 = 30 ÷ 150 × 100 = 20%
答え:20%
よくある間違い:分母を水の120gにすると25%になります。
熱化学方程式の比例計算物理・化学
発生する熱量 = 反応式の係数どおりに反応したときの反応熱 × 反応した物質量の倍率
熱化学方程式の反応熱は、式の係数どおりのmolが反応したときの値です。実際に反応した物質量がその何倍かを求めて、反応熱に掛けます。
例題
C + O₂ → CO₂ で、炭素1molが完全燃焼すると394kJの熱が出るものとする。炭素36gが完全燃焼すると何kJの熱が出るか。原子量は C=12 とする。
- 炭素の物質量 = 36 ÷ 12 = 3mol
- 熱量 = 394 × 3 = 1,182kJ
答え:1,182kJ
よくある間違い:36gをそのまま 394 × 36 と掛けないように、先にmolに直します。
よくある質問
乙4の試験で電卓は使えますか?
使えません。センターの注意事項で、定規類・電卓・スマートフォン・スマートウォッチなどの使用が禁止されています。例題のような割り切れる数の計算を、手で解くのに慣れておきます。
乙4の計算問題は何問くらい出ますか?
センターは科目内の配分を公表していません。民間の出題傾向記事では、物理・化学10問のうち計算は2〜3問とされています。指定数量の倍数計算は、法令の問題として出ます。
ボイル・シャルルの法則でなぜ273を足すのですか?
0℃が絶対温度で273.15Kだからです。気体の体積は絶対温度に比例するので、℃のままでは比が成り立ちません。このページの例題は273で計算しています。
例題の数値はすべて当サイトが作成したもので、過去の試験問題の本文・数値は使用していません。