危険物取扱者 乙種第4類/危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法
特殊引火物・第1石油類・アルコール類の性質
引火点の低い3品名(特殊引火物・第1石油類・アルコール類)の代表物質について、引火点・発火点・燃焼範囲・比重・水溶性と貯蔵上の注意を比較表で整理します。
特殊引火物・第1石油類・アルコール類はどう区別する?
3つの品名は、法別表第一の備考で引火点などの数値によって分けられます。特殊引火物は、発火点100℃以下のもの、または引火点−20℃以下で沸点40℃以下のものです。第1石油類は引火点21℃未満のもので、アルコール類は炭素数1〜3の飽和一価アルコール(変性アルコールを含む)です。
アセトンは引火点が−20℃ですが、沸点が56℃で40℃を超えるため、特殊引火物ではなく第1石油類です。定義の「かつ」を読み落とすと、ここで迷います。
アルコール類からは、含有量60%未満の水溶液などが除かれます(規則第1条の3)。指定数量は特殊引火物50L、第1石油類は非水溶性200L・水溶性400L、アルコール類400Lです(政令別表第三)。
代表物質の性状はどう違う?
下の表は、試験でよく扱われる代表物質の値です。厚生労働省のモデルSDS、国際化学物質安全性カード(ICSC)、試験対策の教科書値を照らし合わせ、資料で違う値は両方を書きました。
混合物のガソリンは成分に幅があるため、引火点・発火点・燃焼範囲のどれも資料で値が違います。当サイトの問題では、こうした差で正誤が変わる問い方はしていません。
| ジエチルエーテル | 特殊引火物。水に少し溶ける。引火点−45℃、発火点160℃(SDSは175℃)、比重0.7、燃焼範囲1.9〜48vol%(SDSは1.7〜48) |
|---|---|
| 二硫化炭素 | 特殊引火物。水に溶けない。引火点−30℃、発火点90℃、比重1.3(水より重い)。燃焼範囲は資料で差が大きい(1.3〜50と0.6〜60) |
| アセトアルデヒド | 特殊引火物。水に溶ける。引火点−39℃(SDSは−38℃)、沸点20℃、比重0.8、燃焼範囲4.0〜60vol%(SDSは4.1〜55) |
| 酸化プロピレン | 特殊引火物。水に溶ける。引火点−37℃、発火点465℃、比重0.83、燃焼範囲2.8〜37vol%(SDSは2.1〜37) |
| ガソリン | 第1石油類(非水溶性)。引火点−40℃以下(ICSCは−21℃未満)、発火点約300℃(ICSCは約250℃)、比重0.65〜0.8、燃焼範囲1.4〜7.6vol%(ICSCは1.3〜7.1) |
| ベンゼン | 第1石油類(非水溶性)。引火点−11℃、発火点498℃(SDSは555℃)、比重0.88、融点5.5〜6℃ |
| トルエン | 第1石油類(非水溶性)。引火点4℃、発火点480℃、比重0.87、燃焼範囲1.2〜7.1vol% |
| 酢酸エチル | 第1石油類(水に少し溶けるが指定数量は非水溶性の200L)。引火点−4℃、発火点426℃、比重0.9、燃焼範囲2.0〜11.5vol% |
| アセトン | 第1石油類(水溶性)。引火点−20℃、発火点465℃、比重0.8、燃焼範囲2.15〜13vol% |
| メタノール | アルコール類。引火点11℃(SDSは12℃)、発火点は385℃と464℃で資料が分かれる、比重0.8、燃焼範囲6.0〜36vol% |
| エタノール | アルコール類。引火点13℃、発火点363℃、比重0.79、燃焼範囲3.3〜19vol% |
引火点の低い順はどう覚える?
引火点は品名の順にほぼ並びます。特殊引火物が−45〜−30℃、第1石油類が−20〜4℃、アルコール類が11〜13℃です。ガソリンだけは第1石油類でも特殊引火物並みに低いので、別枠で覚えます。
語呂合わせより、数字を1本の数直線に並べて覚えるほうが入れ替え問題に強くなります。−45(エーテル)、−39〜−37(アセトアルデヒド・酸化プロピレン)、−30(二硫化炭素)、−20(アセトン)、−11(ベンゼン)、−4(酢酸エチル)、4(トルエン)、11〜13(メタノール・エタノール)の順です。ガソリンは教科書値の−40℃以下で、エーテルのすぐ後に入ります。
もう1つの目安は常温の20℃です。ここに挙げた物質はすべて引火点が20℃より低く、室温の液面にも引火します。第2石油類との境目は21℃なので、この1本の線の右端がそのまま品名の境目になります。
発火点と燃焼範囲で気をつける物質は?
発火点で目立つのは二硫化炭素の90℃です。第4類の中で際立って低く、蒸気が高温の配管や電球に触れるだけで燃えることがあります。反対に、酸化プロピレンやアセトンは引火点が低くても発火点は465℃と高く、引火点と発火点の順番は一致しません。
燃焼範囲で目立つのは、上限の高い特殊引火物です。ジエチルエーテルの上限は48vol%で、エタノールの19vol%、アセトンの13vol%を大きく上回ります。上限が高いと、蒸気の濃い容器の中でも燃える状態になりやすくなります。ガソリンは下限が1vol%台と低く、少しの漏れで燃える濃度になります。
特殊引火物の貯蔵ではなぜ特別な扱いが要る?
二硫化炭素は水より重く水に溶けないので、水を張って蒸気を抑えられます。政令第11条は、二硫化炭素の屋外貯蔵タンクを厚さ0.2m以上の鉄筋コンクリートの水槽に入れて水没させるよう定めています。燃えると有毒な硫黄酸化物が出る点も押さえます。
アセトアルデヒドと酸化プロピレンは、規則で「アセトアルデヒド等」とまとめられています。取り扱う設備は銅・マグネシウム・銀・水銀やそれらの合金で造らず、爆発を防ぐため不活性の気体を封入します(規則第13条の7・第13条の9)。
ジエチルエーテルは、空気や光に長く触れると爆発性の過酸化物ができるおそれがあります(厚生労働省モデルSDS)。容器を密栓して冷暗所に置きます。タンクに貯蔵するときは、圧力タンク以外のタンクでは30℃以下、圧力タンクでは40℃以下に保つ温度の基準があります(規則第40条の3の3)。同じ条で不活性の気体の封入を求めているのはアセトアルデヒド等だけで、ジエチルエーテルは温度の基準だけが対象です。蒸気には麻酔作用もあります。
水溶性の物質はどうまとめて覚える?
この3品名で水に溶けるのは、特殊引火物の後半2つ(アセトアルデヒド・酸化プロピレン)、第1石油類のアセトン、アルコール類の全部です。「特殊は後半2つ、第1石油類はアセトンだけ、アルコールは全部」と品名ごとに区切ると、表を見なくても言えるようになります。
水溶性の物質は、火災に水溶性液体用の泡を使います。第1石油類では指定数量が非水溶性の2倍(200Lに対して400L)です。酢酸エチルは水に少し溶けますが、指定数量は非水溶性の200Lです。
ガソリン・ベンゼン・トルエンはどれも水に溶けず、水より軽い液体です。この3品名で水より重いのは二硫化炭素だけなので、「重いのは二硫化炭素」と1つだけ覚えれば足ります。
職場ではどう使う?
塗装工場や印刷工場では、トルエン・酢酸エチル・アセトンなどの溶剤を日常的に使います。どれも引火点が常温より低く、ふたを開けた缶や拭き取りに使ったウエスから蒸気が出続けます。缶は使うたびに閉め、ウエスはふた付きの金属容器に集めるのが基本の運用です。
研究所や病院の薬品庫では、ジエチルエーテルやエタノールを扱います。エーテルの容器に開封日を書いて古いものの過酸化物に注意する、エタノールの消毒液の近くで火を使わない、といった運用はこの分野の性質から来ています。ガソリンスタンドの給油ホースの静電気除去装置や荷卸し時の接地も、電気を通しにくい第1石油類に合わせた設備です。
試験ではどう問われる?
よく出るのは、物質の数値を別の物質の値と入れ替えた選択肢です。アセトンの−20℃をエタノールに、二硫化炭素の発火点90℃をジエチルエーテルに付けるような作り方です。表の数字を物質名と対で覚えておくと見抜けます。
性質の型では、水溶性の物質を「溶けない」、二硫化炭素を「水に浮く」とする記述が誤りになります。貯蔵の型では、二硫化炭素の水没貯蔵や、アセトアルデヒド等の銅・銀の禁止と不活性の気体の封入が、ほかの物質と入れ替えられます。
並べ替えの型では、引火点や燃焼範囲の上限の大小が問われます。引火点は数直線で、燃焼範囲は上限の大きい順(エーテル48、エタノール19、アセトン13)で覚えておきます。
よくある質問
特殊引火物の覚え方は?
ジエチルエーテル・二硫化炭素・アセトアルデヒド・酸化プロピレンの4つを代表として覚えます。水より重いのは二硫化炭素、水に溶けるのはアセトアルデヒドと酸化プロピレン、と特徴で分けると区別しやすくなります。
アセトンが特殊引火物でないのはなぜ?
引火点は−20℃ですが、沸点が56℃で、特殊引火物の条件である沸点40℃以下を満たさないためです。引火点21℃未満なので第1石油類に入ります。
ガソリンの発火点は300℃と250℃のどちら?
試験対策の教科書値は約300℃、国際化学物質安全性カード(ICSC)は約250℃で、資料によって違います。混合物で成分に幅があるためで、当サイトの問題はこの差で正誤が変わる問い方をしていません。
読んだあとにやること
読んで分かった気になっても、手を動かすと止まります。この分野の練習問題で確かめてください。
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解説と例題は学習用に当サイトが作成したものです。例題の数値はすべてオリジナルで、過去の試験問題の本文・選択肢・数値は使用していません。 最新の法令と試験の内容は一般財団法人 消防試験研究センターの公式情報で確認してください。